DICは、2008年4月に行われた「カラーセッション2008」で、カラーユニバーサルデザインへの取り組みの成果の一つとして「DIC UDカラーパレット」を参考出品しました。その際、大平印刷さんに解説用リーフレットの印刷をお願いし、来場者に配布いたしました。
同社は「人と地球にやさしい高品位印刷」を標榜している京都の印刷会社で、カラーユニバーサルデザインを考慮しつつ、多種多様なクライアントからの仕事を高次元で達成することに取り組んでいます。樋野康二(ひの・こうじ)さんは、社内でカラーユニバーサルデザインリーダーの役割を担っており、今回の企画においてもご尽力いただきました。
好評裏にイベントを終え、両社で改めて、色彩におけるユニバーサルデザインについて意見交換をしました。2回に分けてその内容をご紹介します。(後編)
大平印刷・樋野(以下T):今後はどのようなことをお考えですか?
DIC(以下D):今回の「DIC UDカラーパレット」では、「DICカラーガイド」の色でカラーユニバーサルデザインを考えたということ自体に意義を感じています。「DICカラーガイドシリーズ」は特色のオフセットインキで、紙がアート紙で、ある標準条件で印刷されていますので、「DICカラーガイドの色だったら、この色は区別がつきます」ということが事実としていえます。たとえば同じような色をCMYKの4色で印刷したらどうなるのだろうというのは、別の問題として捉えなければなりません。今回の試みが色の絶対値ではないということは、啓発していく必要があると思っています。
T:カラーセッションでは来場者の方々の反応はいかがでしたか?
D:そうですね。CUDOのテクニカルアドバイザー、伊賀公一さんがいろいろな方をDICブースに連れてきてくださって「これなんだよ」と、ご紹介してくれました(笑)。
伊賀さんご自身も「これだったら区別がつく」「これで指示してくれればいいのに」みたいな話をしてくださり、実際に展示を見にいらした方からも、「こういう発想は今までなかったね」と好評をいただきました。
ですが、今後どのようなかたちで、今回の展示のようなものを提供していくかというのは難しいところで、目下、検討中なんです。
T:私が思うのは、20色を超える色が絶対に全部違う色に見えなければいけないのかというところです。意味を持たせて色を識別すべきところ以外は、仮に識別できなくてもいいということもあると思うんです。
D:今回、伊藤先生とも話したのは、重要なのはサインとか地図のような色が意味をもつケースだろうと。そしてどこまでの意味の違いを色で表すべきかというバランス感覚をもつことが肝心なんだと思います。
以前あった話ですが、地図に変化をつけるために、複数の同系色で塗り分けたいという相談がありました。必要なのは、その時に、本当に識別が必要か否かという意識ですね。必要ないのであれば色選択の自由度が高まります。デザイン的に破綻をきたさないとか、印象が悪くならないとかいうことも大切にしたいですね。
T:日々デザインをしている中でよく出てくる色の役割は、ワンポイントで注意を引きつける効果です。この地図でいえば「現在地」の文字が赤で記されていますが、「色弱の人には、この赤は識別しづらいよ」というようなところが重要になると思います。
D:「危険」というメッセージを喚起させようと、赤い文字を使ったのに実は目立っていなかったりとか。
T:C型(一般色覚)の方ですと、赤と緑と黒とか、そうした色の違いで識別できますが、色弱の人には区別が難しい場合がありますしね。
他にも、東京メトロの路線の色分けは、色弱の方にとって識別は困難です。本当は色を変えたほうがいいと思いますが、色数が多いですし、多くの人に親しまれている色なので安易には変えられないですよね。ですから、丸の内線はMとか、銀座線はGといったように、色だけじゃなく、路線記号を併用して配慮しているんだと思います。
要は、色が意味をもつような場合には、色以外の要素、形や文字とかを合わせて考えることもデザインの中で大事なんだと思います。
画像提供:東京地下鉄
C型(一般色覚)の人には便利な路線の色分けも、色弱者には色の識別が難しい。そのため地下鉄路線図には、路線番号や駅番号が付記された「駅ナンバリング路線図」が用意されている。
(クリックで拡大)
D:カラーのコンサルティングをしている会社の立場としていうと、カラーユニバーサルデザインは、基本的には、色のその他の事象と同列にとらえてもいいんじゃないかとも思います。例えば、文化の違いでも色の感じ方は異なります。日本人が感じる好ましい色と中国人が感じる好ましい色、アメリカ人が感じる好ましい色は微妙に違っています。色の範囲だって文化によって、それこそ日本人同士でも異なります。同じ色を見て、青という人もいるし、緑という人もいます。結構違うわけです。
ですから、たまたま赤と緑を同じ色で認識している人にも配慮するのがカラーユニバーサルデザインの考え方であってもいいのではないでしょうか。そういう人もいるんだという前提で対応するのも色彩の設計じゃないかと。一言でいえば、伊藤啓先生が仰っているように、個性の一部なんだと思っています。
T:CUDOはA型、B型、AB型、O型といった血液型と同じように考えればいいといっています。そもそも一般色覚者でも、全く同じように認識しているのかというと、そうではないようです。一般色覚者の中にも色弱傾向の人もいるようですから明確な線引き自体ができないわけです。
D:カラーユニバーサルデザインに関してはまだまだ割り切れないことが多いことも確かで、ややもするとデザインの足かせのように思われてしまうこともあるかもしれません。
しかし、大切なことは必要な情報がきちんと伝わることで、そこがクリアされれば全ての色が識別できなくてはならないということもありません。少なくとも私たちは前向きにとらえていきたいですね。カラーユニバーサルデザインという課題に取り組んでいくことで、デザインの新しい魅力を生み出すことができるように思います。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。
(前編へ)