スペインは、光と陰の国であるとよく呼ばれます。これは様々な側面を思い浮かべての表現なのでしょう。確かにスペイン各地を旅行して撮った写真の多くは、陰影のコントラストを強く感じます。これは、日差しの強さから生じる「光と陰」ということですが、明暗のコントラストがはっきりとした感性は、太陽光の強さが生み出したというよりも、長い歴史の中で育まれたようにも思えます。
スペイン人には多くの民族の血が流れています。紀元前1千年前のケルト人のイベリア半島への移住に続く、フェニキア人、ギルシャ人、それから5世紀までローマ支配の時代が続きました。5世紀から8世紀初頭にわたっては西ゴート王国(首都トレド)、それに続いて、北アフリカからジブラルタルを渡って上陸したイスラム軍の支配が600年間も続きました。1479年カスティリャ女王イサベルとアラゴン王フェルナンドの結婚により、ようやくイスパニア王国の基礎が成立します。この時代にキリスト教徒によるレコンキスタ(国土回復)も達成します。そして1598年即位のフェリッペII世の時代に「太陽の没する事なき帝国」となり、首都も以来、マドリッドに定まります。
国旗の色はその国の象徴です。スペイン国旗の黄色と赤は、過去に異国の脅威にさらされてきた歴史をからませて、国土(黄色)を民族の血(赤色)で守るといった決意が込められていると言われております。
さらに、スペインの黄色と赤と言えば、闘牛士の真っ赤なフランネルの布「ムレタ」、ヒターノ(スペインジプシー)の踊るフラメンコの衣装、カラフルに塗り分けられたクエンカの町並み、セビリアのサンタ・クルス、ミハスやカサレスなどの町の白い家々の外壁を飾る赤いブーゲンビリヤ、グラナダからコルドバに向かう車窓から眺めた一面のひまわり畑の黄色、エル・グレコやベラスケスが描く宮廷画に描かれた王侯貴族の衣装の色、王宮のインテリヤに好んで使用されたビロードの深い赤、ゴブラン織りや紋章に使われた深みのある黄色等々、スペイン文化には赤と黄色が多く見られます。
1991年には、スペイン語圏の文化普及を目的とした施設、セルバンテス文化センターが東京・麹町に完成しました。日本人がスペインの文化と色彩を知る機会がますます多くなっていくことを期待しています。

タホ川を挟んで望むトレドの街の全貌

岩の上に築かれたイスラム時代の要塞都市、クエンカのカラフルな建物
(右上)セビリアのサンタクルス街。白い壁にブーゲンビリアの花
(右下)グラナダからコルドバへ向かう街道に沿う一面のひまわり畑

TEXT & PHOTO by Muneshiro Yamazaki / Sociedad Hispanica de Yokohama
横浜スペイン協会 URL : http://www.yokohama-spain.org/