色を味方につけるビジネスカラーコラム

ユニバーサルデザインカラー採用の新JIS安全色

ユニバーサルデザインカラー採用の新JIS安全色

安全標識をはじめさまざまな表示や製品の塗り分けに広く利用されている、JIS安全色が2018年に改正されました。それにより、多様な色覚を持つ人々や訪日外国人を含め、多くの人々の安全の確保や利便性の向上が期待されています。

DICカラーデザインでは、2007年より行っているカラーユニバーサルデザインに関する知見に基づき原案作成委員会に参加し、改正後も新JIS安全色の普及活動に携わっています。

1.JIS安全色とは

JIS安全色は、道路標識や避難誘導の案内サインなど様々な場面で用いられており、私たちの暮らしを安全に導く情報の色分けに役立てられています。

これらの案内サインなどでは、自由に色が選ばれているわけではなく、日本産業規格(旧・日本工業規格)に「JIS Z 9101:2018(図記号−安全色及び安全標識−安全標識及び安全マーキングのデザイン通則)」及び「JIS Z 9103(図記号-安全色及び安全標識-安全色の色度座標の範囲及び測定方法)」として定められた色が用いられています。

JIS安全色には、赤・黄赤・黄・緑・青・赤紫の安全色6色と白・黒の対比色2色の計8色が規定されています。

2.時代に合わせたJIS安全色の改正

日本の産業が大きく発展した高度経済成長期に、現在のJIS安全色のもととなる「JIS Z 9101:安全色彩使用通則」(1953年)や、「JIS Z 9103:産業安全標識」(1955年)が制定されました。当初は赤・黄赤・黄・緑・青・白・黒の7色でしたが、1955年に放射能標識が規定され、黄色背景の上に使う赤紫が加わりました。

このように、JIS安全色の色数や伝達する情報内容などは時代の変化と共に改正されてきました。

21世紀は、グローバル化と多様性の時代です。日本では色の見え方の多様性に対応したカラーユニバーサルデザインという考え方が、路線図や施設の案内サイン、教科書などのデザインで、当たり前に行われるようになってきました。

カラーユニバーサルデザイン案内サイン

また、グローバルという点では、これまでに日本の他のJIS規格を国際規格であるISOと整合化させる動きが進められてきました。今回の改正で、安全色を用いてデザインされる安全標識の基本形状、意味などについて規定している「JIS Z 9101」は、対応する国際標準との整合が行われました。

しかし、安全色を規定する「JIS Z 9103」と、それに対応した国際規格である「ISO 3864-4」は、これからの社会で必要と考えられる色覚多様性への対応が十分ではありませんでした。そこで今回、日本のJIS安全色の改正において、初めてカラーユニバーサルデザインの観点から抜本的な見直しが行われました。

3.色覚多様性に対応した検討

色覚多様性に対応すべく、「JIS Z 9103(図記号-安全色及び安全標識-安全色の色度座標の範囲及び測定方法)」に規定されている8色について、それぞれの色みを微調整したサンプルを数多く作成し、検証を重ねました。

一般色覚、1型色覚、2型色覚、ロービジョン、白内障の計130名の方にサンプルを見比べていただいて見分けやすさの評価を行い、最終的な改正案が選定されました。また、色弱者やロービジョンの人は明るさの情報を色識別の重要な手がかりとしています。そのため、各色が異なって見えるように輝度率の下限と上限が設定されました。

下記の円グラフは、旧JIS安全色と改正案の色の見分けやすさ評価の全体結果を示したものです。

旧JIS安全色に比べて、改正案の組み合わせでは「色の違いがすぐ分かる」という回答が増え、「色の違いがとても分かりにくい」という回答が大幅に少なくなり、見分けやすさが大きく改善されました。

旧JIS安全色と改正案の色の見分けやすさ評価の全体結果
色の範囲の主な変更点
JIS安全色 色調整の方向性

4.JIS安全色の色指定と様々な分野での活用

カラーユニバーサルデザイン

JIS安全色は、塗装色を前提にマンセル値で色が指定されています。しかしマンセル値は、CMYK値による冊子などの印刷や、RGB値によるデジタルサイネージなどの色指定には用いることが出来ません。

それぞれの媒体で色再現の領域が異なるため、用途ごとに適切な色彩値を用いないとカラーユニバーサルデザインが機能しなくなってしまいます。

そこで、印刷やデジタルサイネージ等の用途でも今回改正されたJIS安全色を活用できるよう、塗装色に近似しつつ、印刷やデジタル表示機器特有の色再現範囲を最大限に活かしたCMYK値とRGB値が設定されました。これらについても塗装色と同様に、さまざまな色覚の方による見分けやすさの評価と色の調整を行っています。DICカラーデザインも参加する新JIS安全色普及委員会から、改正内容や各色彩値とそれに伴う色指定に関する情報を提供しています。

2021年現在、訪日外国人の増加や日本でのオリンピック・パラリンピックの開催に伴い、新JIS安全色の活用が普及してきています。

よく目にする公共交通機関・施設のサインなどのピクトグラムは、「JIS Z 8210:案内用図記号」に設定されており、JIS安全色が用いられています。ユニバーサルデザインカラーを実現した新JIS安全色が、多様性ある社会の豊かな暮らしに貢献できることを願っています。

色彩豆知識・カラーユニバーサルデザイン

  • 現代社会では、公共施設の案内表示・情報機器・印刷物・教科書など、多くのものがカラーで表現されています。しかし、色の見え方には個人差があるため、人によっては一部の色の組み合わせが区別しにくく、不便さを感じるケースもあります。

    こうした背景から、多くの人が等しく情報を認識できる配色を用いたデザインが社会的に求められており、鉄道の路線案内図や防災情報をはじめ、公共性が高く安全性に関わる分野を中心に見分けやすい配色やデザイン上の改善がなされています。

  • カラーユニバーサルデザイン 路線案内図(阪急電鉄株式会社/大平印刷株式会社)
    路線案内図(阪急電鉄株式会社/大平印刷株式会社)
  • このように、色覚の多様性に対応して、より多くの人に利用しやすい製品や環境、サービス、情報を提供するという考え方を「カラーユニバーサルデザイン」と呼びます。経済産業省から発表された新JIS安全色のリリースでは、カラーユニバ―サルデザインに用いられている色彩を「ユニバーサルデザインカラー」と呼んでいます。

    弊社取り組み事例:カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットの研究開発

*関連サイト
・経済産業省ニュースリリース
https://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180420006/20180420006-2.pdf
・新JIS安全色普及委員会
http://safetycolor.jp/
・デジタルサイネージ災害コンテンツガイドライン
https://digital-signage.jp/wp-content/uploads/DSC_saigaicontents_ver2.pdf

DICカラーデザインでは、産官学連携の取り組みや研究で培った知見を基に、カラーユニバーサルデザイン(CUD)を踏まえた色提案・監修を行っています。
パッケージ、GUI、案内サイン、防災情報など様々な分野において、人々の暮らしの安全の確保や利便性の向上を図っています。
CUDを取り入れたデザインに関する詳細は、こちらからお問い合わせください。