色を味方につけるビジネスカラーコラム

【ビジネス生存戦略】
カラーイメージを味方につける
「センスがない」とあきらめるのはまだ早い

知っていますか?色の影響力

カラーイメージ

色づかいは「センス」の有無の問題とされることが多く、「なんとなく難しい」と思われがちです。ものの大きさ、色、形や、キラキラ、艶やか、マットといった質感など、私たちが目から得ている情報は80%以上だといわれています(出典:『産業教育機器システム便覧』)。中でも色は印象を左右し、行動に影響を与え、時には気持ちを高揚させたり沈静したりと心理にも訴えかける役割を果たしています。
日常は色に溢れているにもかかわらず、なぜか感じてしまう難しさ。それは色がおよぼす心理的な効果やカラーイメージについて、あまり知らないことが原因なのではないでしょうか。「センスがないから」とあきらめてしまうのは、まだ早いかもしれません。

1.カラーイメージを味方につける

色から受ける印象「カラーイメージ」は、「赤からりんごを連想する」という目で見えているものの色だけでなく、成長していく過程で経験したことも影響しながら構築されます。「赤から『派手』を連想する」というように、色に対しポジティブもネガティブも含めたさまざまな印象を抱き、その積み重ねによって作り出されているのです。
企業のロゴに親近感を抱いたり誠実さを感じたりした時、あるいは商品に華やかさや高級感を覚えたり幸せな気持ちになったりした時、もしかしたらカラーイメージに誘導されているのかもしれません。その色が他者にどのような印象を与えるのか。カラーイメージを知ることは、色の影響力を味方につける一歩となるのではないでしょうか。

赤のカラーイメージ

赤のカラーイメージ

赤のカラーイメージには「アクティブ」「情熱的」「達成感」「自信」「生命力」「闘争心」などがあります。
赤は進出色で実際の位置よりも近くに感じられるため、とても目立ちます。そのため、危険や注意を促す案内サインにも効果的です。エネルギッシュで外交的な印象も与えることから、アメリカの大統領選など政治的な機会やビジネスの場などで、ネクタイなどに取り入れているのを目にします。また、スポーツのユニフォームに採用されることも多くあります。

白のカラーイメージ

白のカラーイメージ

白のカラーイメージには「清潔」「純真」「正義」「平和」「はじまり」「孤独」「空虚な」「軽い」などがあります。
現代では定番となった白いウェディングドレスは、1840年にイギリスのヴィクトリア女王が婚礼衣装として着用したことから流行し、定着していったといわれています。清らかでけがれのない無垢なイメージは、白の語源とされる隠すところのない明白な様子を指した「著(しる)」と結びつけられます。

黄色のカラーイメージ

黄色のカラーイメージ

黄色のカラーイメージには「明朗」「躍動」「快活さ」「軽さ」「注意」「嫉妬」などがあります。
黄色は色相の中で最も明るい色です。注意を引く効果を持つため、小学生のランドセルカバーや、目の見えない人や視力が弱い人を導く点字誘導ブロックなどに用いられています。また、セールでは赤と組み合わせて気軽さや安さを強調したり、黒と組み合わせて踏切の遮断機や道路標識などで注意喚起を促したりしています。また黄色いキャラクターは、子どもをはじめ幅広い年代に親しまれやすい傾向があります。

ピンクのカラーイメージ

ピンクのカラーイメージ

ピンクのカラーイメージには「やさしさ」「愛」「恋」「かわいらしさ」「感謝」などがあります。
ピンクは、鮮やかさで印象が大きく変わります。ビビッドな色合いは色気や激しさを感じさせる一方で、淡いピンクは柔和で人の心を穏やかにします。行動を抑制する強力な効果はありませんが、トラブルが起きにくい環境を築くことができます。これを活用したのがアメリカのサンタクララ郡の刑務所です。無機質な凶悪犯収容部屋の壁をやさしいピンク色に変えたところ、受刑者同士のけんかや暴動の発生率が低下したといいます。
古来より「桜色」「紅梅色」など、四季の花や自然界にあるものからこの色味の名前をつけてきた日本で「ピンク」という呼び名が定着したのは、20世紀に入ってからだといわれています。

緑のカラーイメージ

緑のカラーイメージ

緑のカラーイメージには「調和」「さわやかな」「平穏」などがあります。
ミスを避け、慎重にことを進めたい書類などにしばしば緑色が使われるのは、一歩踏みとどまらせる効果を期待してのことです。また、緑は森や草木を連想させることから安らぎを感じ、長時間見ていても目が疲れにくい心理作用も期待できます。学校の「黒板」に緑が取り入れられているのは、目の疲れを和らげるだけでなく、教室の窓から入る光の反射を抑え、白いチョークの文字の背景色として視認性も高いからです。

青のカラーイメージ

青のカラーイメージ

青のカラーイメージには「平和」「誠実」「冷たい」「涼しい」「集中」「清潔」「憂鬱」「孤独」などがあります。
色の濃淡などで異なる印象を与えます。明るい青はフレッシュで若さをイメージさせます。洗剤や歯磨き粉などの衛生用品のパッケージでは、白との配色が清潔感や爽やかさを強調しています。都会的な印象を与える一方、紺色には保守的なイメージもあります。

紫のカラーイメージ

紫のカラーイメージ

紫のカラーイメージには「上品」「女性的」「厳粛」「神秘」「妖艶」などがあります。
日本的で古典的なイメージもある一方で、鮮やかな紫には低俗なイメージもあります。ライラックやラベンダー、藤の花などの紫の花はやわらかなよい香りがする一方、洗練されたエレガントさもあります。色そのものが気品のある香りをまとっているようにも感じられることから、薫り高さを売りにするような商品や女性向け商品のパッケージに多用されています。また、赤紫はJIS安全色では「放射能」の色として設定されています。近年では気象庁が「警報のうち特に警戒を要する区分の色」として紫を設定しました。多くの人にとって危険が伝わりやすい色覚の多様性を配慮した色として、防災情報や気象情報の色合いの統一化が進められています。

オレンジのカラーイメージ

オレンジのカラーイメージ

オレンジのカラーイメージには「朗らか」「カジュアルな」「あたたかい」などがあります。
親しみやすく活力も感じさせるため、IT企業や食品メーカーなど多くの企業のロゴやブランドカラーにも使われています。遠くからでも目立つことから、船舶の救命浮輪や救命胴衣など国際的に救急・救助の色としても用いられてきました。

黒のカラーイメージ

黒のカラーイメージ

黒のカラーイメージには「高級」「シック」「清貧」「重厚」「陰鬱」などがあります。
黒は重厚で格調を感じさせることから、カメラや家電などに多用されてきました。職人技が生み出す漆の器の艶やかな黒は、盛り付けられた料理を一層華やかにし、特別感を演出します。ファッションではラグジュアリーなハイブランドからシンプルなカジュアルまで、シーンに応じて幅広い魅力をみせる色として身につけられています。特に近年就職活動の定番となっている白いシャツに黒いスーツの組み合わせは、引き締まって見えるだけでなく、きちんとした印象をも与えてくれます。

金銀のカラーイメージ

金銀のカラーイメージ

金のカラーイメージには「栄光」「豪華」「永遠」など、銀には「先進的」「高品質」「知性」などがあります。
金、銀ともに金属としての価値も高いため、そのイメージをそのまま引き継いでいます。彩られたもの自体を「特別なもの」として認識させることから、ハレの場やプレミアム感の演出に適しています。他の色を組み合わせることでさまざまな印象に変化します。金色と赤との組み合わせは、豪華な印象を与えます。金色とロイヤルブルーや黒などとの組み合わせは、チョコレートやビールなど食品のパッケージで見られ、高級感だけでなく豊かな時間や芳醇な味わいをイメージさせます。銀色は電化製品などで品質の高さや清潔感、スタイリッシュな印象を与えています。

2.感覚を惑わす色の力

ふわふわとやわらかそうだと思っていたのに、触ってみたら意外と硬かった。ぽかぽか暖かそうに見えたのに、実際には思っていたほどではなかった。予想よりも早く近づいてきた車にびっくりした。このような感覚のずれは、色の性質による心理効果が生みだしている場合があります。
国や習慣、風土などによって異なる部分はあるものの、色による温度感覚や重量感覚、距離感覚などは触覚や嗅覚、味覚などの共感覚や心理作用とも結びつき、多くの人に共通性が高いとされています。こうした感覚に色の性質が及ぼす心理効果を理解することは、温かいものをより暖かく感じさせるなど商品の特性をより強調したり、肉体的疲労が大きい仕事を心理面からサポートしたりするなど、より快適な生活を送る助力にできるかもしれません。

暖色と寒色

皮膚で感じる温度に加えて視覚による温度感覚を効果的に利用していることが多いのがヒーターやこたつなどの暖房器具です。発熱部分をオレンジ色や赤っぽく光るデザインにすることで、実際よりも温度を高く感じさせます。また、暑い夏には涼を求めて青や水色などが多用されています。暖かさを感じさせる赤やオレンジ、黄色などの色相は暖色、寒さや涼しさを感じさせる青系の色相は寒色といいます。寒暖をあまり感じさせない黄緑や緑、紫は中性色といいます。

暖色と寒色

明色と暗色

運送会社の白い大きな段ボールを見ても、あまり重さを感じないことがあります。物の軽重や硬度、動作の俊敏さや鈍重さを感じとる感覚にも色は絡んでいます。色相にかかわらず、光を多く含んだような明るい色を明色、暗く濃い色を暗色といいます。基本的に明色はふんわりとした軽さややわらかさを、暗色は強さや重さ、硬さなどを感じさせます。

明色と暗色

純色と濁色(中間色)

純色は、それぞれの色相を代表する最も鮮やかで冴えた混じりけのない色です。この純色に白または黒を混ぜた色は清色といい、白を加えた場合は明清色、黒の場合は暗清色といいます。また灰色と純色を混ぜた、くすんだ鈍く穏やかな感じの色は濁色(中間色)といいます。鮮やかな純色は、濁色(中間色)よりも近くに見えます。

3.色の好みを決定づける複雑な要因

服や小物、インテリアなど、気がついたら身の周りには似たような色ばかり。誰しも、つい手に取ってしまう好きな色、無意識に避けてしまう苦手な色があるのではないでしょうか。
寒色や暖色など色の性質により引き起こされる心理効果は、国や習慣などの違いを越え共通性が高いとされています。一方、好き嫌いという嗜好や、美しい醜いといった評価に基づく色に対する反応は、個人差があります。こうした、どちらかといえば情緒的な感じ方が決定づけられるには、年齢や性別、民族、国、時代、文化、宗教などさまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

地域・気候・風土などの影響

色の嗜好性を決定づける要因の一つに、住んでいる地域や国など環境があげられます。光は緯度や経度、気候などの地理的条件により微妙に異なります。また、自然物や建築物などの景観も地域によりそれぞれ特色があり、異なる風土・文化を育んでいます。これらが嗜好の形成や美醜などの評価に影響を与えると考えられているのです。
日本では北方は寒色系、南方は暖色系といった緯度の違いで、色相に対する嗜好が異なる傾向にあります。また気温や湿度などの影響からか、日本海沿岸と太平洋沿岸では清濁の好みに違いがみられ、太平洋沿岸では清色を好む傾向があります。

個人の年齢や性別による影響

色に対する嗜好には年齢や性別にも違いが表れ、個人差が出やすくなるといわれています。その色に対してどのような経験をしたのか、その時どのような感情を抱き、その結果どのようなイメージに繋がっていったのかという個人の経験にも左右されるからです。
一般的には年齢を重ね、社会経験を積むに従い好みは変化します。低年齢層向けの商品にはきっぱりとした鮮やかな色がよくみられるように、幼少期は純色などの鮮やかな色や明るい感じの色を、年齢を重ねるにつれ暗い色や穏やかな感じの濁色(中間色)へと好みが変わっていく傾向があるとされています。

個人の年齢や性別による影響

4.「なぜその色をつかうのか」戦略的に

色が与える情緒的な印象であるカラーイメージ。寒暖を感じさせたりするような色の性質が私たちに及ぼす心理効果。このような影響力を効果的に活用することで、色には2つの価値が生まれました。視覚的にわかりやすく情報を伝える機能的な面と、人の心理に働きかけイメージを演出する感性的な面です。私たちの感情や行動に訴えかけてくる企業のロゴやプロモーション、商品、空間やファッションなどの多くは、このような色の価値も意識されているといえます。
日常は色に溢れています。色の知識を持つことは戦略的に「なぜその色をつかうのか」を考えられるようになるだけでなく、色の価値をも最大限に引き出すことにつながります。
「センスがないから」とあきらめてしまうのはもったいないのです。
では、「なぜその色をつかうのか」のフレームワークを、ものづくりを念頭に考えてみましょう。

5.「人・モノ・時代」という基本視点で多角的に色をとらえる

  • 「人・モノ・時代」のフレームワークは色彩検定協会が実施している『AFT色彩検定公式テキスト1級編』でもカラーマーケティングの基本視点とされています。
    「人」の視点はどういう意味合いかというと、「人によって色の好みは異なる」ということです。「十人十色」という有名な四字熟語にも象徴されるように、人によって色の好みが違うのは誰もが知っていることです。
    「モノ」の視点は、「モノによって色の好みは異なる」ということ。赤いスポーツカーが好きな人であっても、赤いカーテンを好むかというと、それは別問題です。モノのよって、好ましいと思う色は異なってきます。

  • 人・モノ・時代
  • 「時代」は「トレンド」と言い換えても良い視点です。人の好みは移ろいやすいものです。例えば、去年は新鮮な印象でポジティブに感じていたグリーンの服が、今年はなんとなくネガティブに感じてしまう。その逆に、重苦しく感じていた黒の服が、スッキリとした色に感じるようになったり、ポジネガは変化します。時代の空気は気づかないうちに変わっていて、人はそれを敏感に感じ取って、好ましい色も可変します。
    このフレームワークは、多角的に色をとらえるための基本視点であり、文章を考える際の5W1H((When、Where、Who、What、Why)のように用いることで、「なぜその色をつかうのか」という仮説を補完することができるようになります。

6.自分が抱いているカラーイメージは正しいのか?

実際のビジネスでカラーイメージを活用することを考えた場合、一般的なカラーイメージにとらわれ過ぎることは危険です。
なぜなら「人・モノ・時代」との関係性によって、カラーイメージは変わってしまうからです。また、一般的なカラーイメージ解説は、基本色彩語に対し記述されていることがほとんどですが、カラーイメージ活用はもっと幅広い色相、色調に及びます。
40代男性が抱いている特定の印象に対するカラーイメージが、商品ターゲットの10代女性のカラーイメージと同じであるか否かはわかりません。似た部分があっても、思わぬ違いがあることは予想できる事態です。
カラーイメージは一律ではありません。国籍、居住地、性別、年代など、多様な要因でカラーイメージの抱かれ方は変わります。このように曖昧さをもつカラーイメージを、統計的に調べて、可視化する調査手法にDICカラーデザインオリジナルの調査手法「DCAM(ディーカム)」があります。DICが開発した「色域選択法」を用いたカラー集計は、曖昧なイメージを、曖昧さをもったカラーイメージとして可視化するユニークな調査手法です。

Colorful

「自分が抱いているカラーイメージは正しいのか?」「ターゲットは自分と同じようなカラーイメージを抱いているのか?」…。グローバル化が進み、海外市場向けのビジネスも広がっている時代において、言葉の違いを超越した色によるイメージコミュニケーションはますます重要性を増しています。

DICカラーデザインでは、デザイナーをサポートする客観的なデータの提供をはじめ、企業の商品やサービスを展開する国や地域、ターゲット層への訴求力を向上する色提案など、ご要望に基づき豊富な色の知識を活かしたオーダーメイドなご提案をいたします。 詳細はこちらからお問い合わせください。