色を味方につけるビジネスカラーコラム

購買意欲を高める色の決め方とは?
カラーマーケティングで成功する配色の秘訣

購買意欲を高める色の決め方とは?カラーマーケティングで成功する配色の秘訣

商品を買う時に決め手になるのはどういった部分でしょうか?例えば携帯電話を買う時、優先順位が高いのはカメラの性能の良さ?値段?それともデータを保存できる容量でしょうか?その動機は様々ですが、当日その中に買いたい色がなかったら、買うのは一旦保留にしてしまうかもしれません。色彩は購買意欲に大きくかかわっています。商品を開発したり空間を設計する段階で購買意欲を高めるためのカラーマーケティングはとても重要なのです。

1.カラーマーケティングって何?「色彩」を中心にした基本のフレームワーク

例えば「赤」を想像する時、どんなイメージを抱きますか?「暑さ」や「情熱」などでしょうか?それとも薔薇の赤でしょうか?あなたが応援しているアーティストのテーマカラーかもしれません。色に対する心理的な印象というのは地域・年齢・経験など様々な要因から変化していきます。そうした印象は色彩心理に基づいた「カラーイメージ」活用として、ビジネス戦略の中で用いられています。

基本的なカラーイメージ

色から連想されるモノ・コト色から連想されるイメージ・印象
りんご、いちご、太陽、血など熱い、情熱的、派手、危険など
みかん、オレンジ、夕日などオレンジ暖かい、陽気、楽しい、派手など
レモン、グレープフルーツ、タンポポなど黄色明るい、派手、目立つ、注意など
草、木、葉、森林、自然など若々しい、安全、爽やかなど
空、海、水、湖など爽やか、澄んだ、寒い、男性的など
ぶどう、すみれ、ラベンダーなど高貴な、大人っぽい、お洒落など
さくら、もも、春などピンク女性的な、柔らかい、甘いなど

上記のようなカラーイメージは一般的ですが、ビジネスの観点から購買意欲を高める色は何か?というのは、購買する人の嗜好を把握した上で、多彩なカラーイメージのどこに焦点を当てるべきかを考えることが大切です。ピンクを活用すると言っても、「女性らしさ」を訴求したい場合と、「春」を感じさせたい場合では、デザイン的な表現は異なってきます。
思考の際のヒントとなるのは色彩検定協会が実施している『AFT色彩検定公式テキスト1級編』でカラーマーケティングの基本視点とされている「人・モノ・時代」のフレームワークです。

「人・モノ・時代」のフレームワーク

【カラーマーケティングの基本軸「人」とは?】

「人」の視点というのは当たり前とも思われるかもしれませんが「人によって色の好みは異なる」ということです。色の嗜好は年齢や性別、地域によって変化します。商品の開発や空間設計で色彩の計画を立てる時はターゲットとなる「人」の年齢や性別、地域を決め、そのターゲットがどのような色を嗜好するのか、その調査から始めることが大事です。

カラーマーケティングの基本軸「人」

例えば生活雑貨・インテリア用品などを販売する3COINSは購買層のほとんどが女性で年齢は30代後半が中心だったと調査で改めて判明したことで、商品のデザインや色彩の戦略を見直し、コロナ禍においても事業が成長、その人気や評判が高まったと言えます。カラーマーケティングではターゲットとなる「人」の調査を行いましょう。

参考:4つのバージョンアップで急成長を実現!「3COINS」が2年間で進めたブランド改革

【カラーマーケティングの基本軸「モノ」とは?】

もし、ターゲットとなる人の好きな色の多数が「グリーン」だったとしても、その人が購入する「車」の色の第一候補に「グリーン」を選択するでしょうか?熱狂的に好きな一部の方を除いて、車においては「白」「黒」「シルバー」などを選択する方が多いのではないでしょうか。実際アメリカの「アクサルタ」が発表した2021年版の日本における車の色の人気色は「ホワイト」で37%、一方グリーンは3%でした。車の場合はベーシックな色が好まれることが分かります。また、部屋のカーテンを選ぶ際は壁紙や家具、床の色との調和といった観点から色を選ぶ事が多いでしょう。 「モノ」によって好まれる色は変化するということです。

【カラーマーケティングの基本軸「時代」とは?】

「時代」は「トレンド」と言い換えても良いでしょう。昨年まではその時に流行っていた色のジャケットをよく着ていたけれど、今年は着るのを躊躇してしまう、そんな経験はありませんか?ファッションやヘア、ネイルなどには流行色というものがありますが、それはどのように決められるのでしょうか?日本を含む世界17か国(2021年時点)からなるインターカラー(国際流行色委員会)では各国が提案色を持ち寄り、実シーズンに先駆けること約2年前に春夏カラー、秋冬カラーを選定し、日本ではJAFCA(日本流行色協会)が発表しています。カラートレンドが2年前から決まるのは商品の企画、製造、販売に約1年半かかると言われていたからです。

ところが、市場の流通のスピード化によりその業界を代表するブランドが売れ筋のカラーを1シーズンの中で判断し、そのカラーの商品を重点的に販売することでそれが流行色となることも昨今よく見られます。
当社もアジア地域を独自に調査し、アジアにおけるカラートレンドを発表しています。
時代の空気によって好まれる色は変化していくのです。

参考:ASIA COLOR TREND BOOK
カラートレンド

2.色の持つ役割を知って購買行動への影響を考えよう

「日本書記」によれば推古天皇の時代に聖徳太子らが制定した「冠位十二階」では帽子(冠)による身分の象徴の違いの判別に色が用いられました。これは色の「機能性」を用いた例と言えます。
一方で、1990年代、パソコンの色と言えば黒・グレー・ベージュなどで占められていた時代に突如としてカラフルなiMacをAppleが発表し大変な話題となりました。色の持つ「情緒性」をうまく商品に展開した例と言えます。このように「色の持つ役割というのは大きく「機能性」と「情緒性」に分類できると言えます。

色の「機能性」

色の持つ機能的な役割とは、注意を向けて対象を探すときの発見しやすさを表す「視認性」、注意を向けていない対象の発見しやすさを表す「誘目性」、複数の対象の区別のしやすさを表す「識別性」、文字や数字の読みやすさを表す「可読性」などがあげられます。
例えば背景色と対象物の色の明度差をつけたり、文字だったら周りに白くふち取りをつけたりすることで「可読性」という機能を上げることができます。
また、一般的に日本の郵便ポストなら赤、救命胴衣ではオレンジ、などの色が使われるのは遠くからでも発見しやすいという目的が明確にあるためです。こういった目的がはっきりしている時、色の機能性は重要になってきます。

縁取りやシャドウで工夫する
可読性をあげる
郵便ポスト
郵便ポスト
暖色・寒色
暖色・寒色

「暖色」と「寒色」も色がもたらす機能で代表的なものです。真っ赤に燃える炎から「熱さ」を、澄んだ青色の池の湖面を見れば「冷たさ」を感じます。
また、「暗色」と「明色」で感じ方も変化します。引っ越しの際の段ボールなどは心理的に負担を軽減させるために軽さを感じる「白」や「薄い茶」が用いられたりします。

色の「情緒性」

黒地にゴールドの模様があしらわれた皿
黒地にゴールドの模様があしらわれた皿
鮮やかなオレンジネットのみかん包装
鮮やかなオレンジネットのみかん包装

色が情緒性に訴える身近な例は「高級感」の表現でしょう。背景に黒やワインレッドなどの暗い色を使い、ゴールドの差し色を使った配色は様々な商品で見かけます。
また、キャラクターに使われている淡いピンクやコーラル、ペパーミントなど、明度が高い配色で「かわいさ」を表現するといった例も一般的です。「かっこいい」や「好き」「美しい」など、様々な感情を色によって呼び起こし、購買意欲を高めることができます。
また、購買意欲を高める色の活用例として、鮮やかなオレンジのネットに入れて販売されているみかんがあげられます。色の同化現象という機能を使って、みかんの赤みを強調させることで、「おいしそう」という印象を与えているこの工夫は「機能性」と「情緒性」の両方を活用した例と言えるでしょう。
緑の笹の上に赤いまぐろの刺身をおくといった色相対比の工夫も同様です。

3.年代や地域によってカラーイメージは異なる。リサーチで見えてくる色の印象。

同じ言葉を聞いても連想する色は人それぞれです。例えば新しく商品を企画する側の担当者がイメージして相応しいカラー展開が出来たと思っても実際のターゲットユーザーにそれが受け入れられなければビジネスとしては成功と言えません。対象国・地域の人々の価値観やライフスタイルの調査・分析を通じたカラーマーケティングをしてこそ、ブランド戦略や構築に役立てることが可能となります。

世代で違う「肌の潤いを守る」色とは?

DICカラーデザイン(株)・楽天インサイト(株)共同自主調査2019より

この図は、機能性食品・飲料や化粧品などで用いられることの多い、「肌の潤いを守る」という訴求フレーズに対する調査結果の一例を表しています。結果、この調査では世代差があり、同じフレーズを提示しても、喚起されるニーズは世代ごとに異なることが示唆されました。
選択率が高い色の領域は、主に肌の色を想起させる暖色系・高明度と、水を想起させる青緑〜青系を中心とした2つの領域に集中し、全体的に明るいトーンのやさしく柔らかな色が多く選択された点が特徴的でした。世代属性別に集計して比較すると、10〜20代では青緑〜青系が上位を占め、50〜60代では暖色系や明るい色が上位を占めており、年代によって上位の構成色に大きな違いが見られました。

国で違う「カジュアル」な色とは?

日本人・中国人・タイ人を対象としたカラーイメージ調査結果の一例

この図は、DICが、日本人・中国人・タイ人を対象としたカラーイメージ調査結果の一例です。「女性的」という言葉はどの国も比較的近似したカラーイメージで捉えられているのに対し、「カジュアル」は国によって大きくカラーイメージが異なることが分かります。

これらの結果を、各国ごとの文化的背景と併せて分析することで、その国の特性に合わせた訴求力の高い企画やデザインの検討に役立ちます。

DICの独自調査手法「DCAM」でより感覚的なカラーイメージを捉え、マーケティングに利用

DCAM(ディーカム:DIC Color Application Method)

DCAM(ディーカム:DIC Color Application Method)」は、調査対象を色と認知体系の2つのアプローチで統計的に分析するDICが独自に開発したイメージ調査手法です。
「人・モノ・時代」によって変化する漠然として掴みにくい調査対象のイメージを多角的に把握し購買意欲を高める色を探っていきます。
ブランディングやものづくりなどの現場における、市場動向やターゲットの嗜好性把握、競合との差別化、製品企画、プロダクトや建築・空間などのカラーデザイン、R&D・研究開発などのエビデンスとしてご活用いただけます。

4.購買意欲を色から考えることは消費者を考えること

購買意欲を高める色について参考になるフレームワークや、機能や情緒といった面からの役割、年代や地域でどのようにカラーイメージをリサーチしていくのかご紹介しました。
消費者の視点に立って、色彩の計画を立てていくプロセスが重要になってきます。
DCAMで調査を依頼したい、色選びで根拠となるデータが欲しい、配色も含めたデザインをお任せしたい、などのお困りごとがあれば、色の体系的な知識を強みに持つDICカラーデザインまでお気軽にお問い合わせください。

資料ダウンロード
入門 カラーマーケティング

資料ダウンロード カラーマーケティング

好きな色が売れる色になるわけではありません。「人・モノ・時代」と「色」との関係性を基に望まれる色を考えるカラーマーケティング発想が売れる色の企画に導きます。必然的カラープランニングの考え方を学びます。