ロゴデザインにおける色の役割とは?
心理的イメージと決め方のヒント
ブランドのイメージを理解し浸透させる役割としての、ロゴデザインは企業や組織の世界観を広くビジュアルで表現するものです。その中でも重要な要素となってくるのが「色の役割」や「配色」です。ブランド開発やロゴデザイン作成のプロセスにおけるカラー選定について解説します。
1.VIを決める際に重要なロゴやブランドにおける色の役割
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは?
ロゴデザイン(シンボルマーク)や、ブランドカラーなどは一般的にVisual Identityを略して「VI」の一環として使われます。VIは、企業や組織の文化を築いて、そのロゴや商標、色、フォントなどの視覚的な要素を一貫性のあるデザインにまとめたものとなり、そのブランドが持つ本質的なエッセンスを消費者や顧客の体験の中にどのように拡げ伝えていくかをビジュアルで表現していくものとなります。一貫性のあるブランド戦略・デザイン戦略を構築することで、組織の価値・姿勢を効果的に伝達することが可能となるでしょう。
商品、サイトやアプリ、会社案内など、印刷物からデジタル上での表現、また、建築物の内装や外観、ユニフォームなど、あらゆる場面で統一されたイメージやビジョンを用いて組織のメッセージを展開していくことで組織の世界観を作り上げ、「あのブランド(企業)といえばあのロゴや色のイメージね」という同じ印象を残せるようになると、ロゴデザインやその配色も含めたVI(ビジュアル・アイデンティティ)の役割が最大限活かせるようになっていくのです。
ブランドコンセプト・ロゴデザイン開発におけるカラーの抽出プロセス
まず企業や組織、ブランドの伝えたいメッセージ・理念・ビジョンがどこから成り立ってきたのか、何を伝えたいのかの核となる部分の本質的な理解がデザイン戦略の始めの一歩となるでしょう。表面的な流行や経営層の好みだけで決めてしまっては、その特性や魅力を伝えるという目的を見過ごしてしまうことになってしまいかねませんし、そのデザインを運用することは時間や労力の無駄となってしまいます。
質の高いデザインを得るためには、まずブランドコンセプトを把握するために「現状の把握」「インタビュー」「ワークショップ」などを行い、ブランドコンセプトの制定、ネーミング開発などを経てVIのプロトタイピングを作成しながら進めていくことです。ブランドコンセプトを念頭に置きつつ、他のブランド、企業や組織の比較調査を行い、クリエイティブのデザイン開発を行っていきます。そのデザイン開発を行う中で、具体的な世界観を作成し、大まかな方向性を決定する工程と同時にカラーの抽出のステップを行うことになります。
デザインの三要素は「色」と「形」と「素材」。これらによって成り立っているのは言わずと知れていますが、形や素材を変えなくても、色を変えることで簡単に印象やイメージをコントロールできるという側面があります。人は五感の半分以上を視覚に頼っており、色はデザインの三要素の中でも人間の視覚に一番ダイレクトに訴えかけ、人々の心や気分を変えることができるのです。
色を上手く使えば目的や用途に向けた機能的な効果だけではなく、「美しさ」や「快さ」などの情緒的な効果の演出が可能となるのです。
何が想起される?経験から導かれるカラーイメージ
赤を例にいえば、りんごの赤はなじみ深く感じられるものですし、赤から「熱さ」や「情熱」という印象を連想するのは、一般的と言えます。
成長していく過程での経験、生活環境・生活経験の中での積み重ねが、それぞれのカラーイメージを形成している部分が多く、青・白・赤の三色旗(トリコロール)はフランスを象徴し、フレンチの食事やチームのユニフォームのエンブレムをイメージさせるのは経験の中で獲得していくイメージです。
また、地域特有でのカラーイメージもあります。日本の神社の鳥居の赤ならば、魔よけと言う意味を含んでいたりします。その他、季節感を表す色、時間帯を表す色、甘さ&辛さといった味覚をイメージさせる色など、それぞれの色は五感と密接な関係にあります。
ただこのような基本的なカラーイメージの他にも地域や個人差が大きいものもあるので、ロゴの色を決める際にはできればブランドの対象とするユーザーに見てもらい、そのイメージから何が想起されるかインタビューする過程も必要になってくるでしょう。
基本的なカラーイメージ
色から連想されるモノ・コト | 色から連想されるイメージ・印象 | |
---|---|---|
りんご、いちご、太陽、血など | 赤 | 熱い、情熱的、派手、危険など |
みかん、オレンジ、夕日など | オレンジ | 暖かい、陽気、楽しい、派手など |
レモン、グレープフルーツ、タンポポなど | 黄色 | 明るい、派手、目立つ、注意など |
草、木、葉、森林、自然など | 緑 | 若々しい、安全、爽やかなど |
空、海、水、湖など | 青 | 爽やか、澄んだ、寒い、男性的など |
ぶどう、すみれ、ラベンダーなど | 紫 | 高貴な、大人っぽい、お洒落など |
さくら、もも、春など | ピンク | 女性的な、柔らかい、甘いなど |
2.色の働きからブランド・ロゴのカラーを考えよう
配色の基本や色彩心理を知って論理的にブランド・ロゴのカラーを選定し、一過性や単なる好みではなく、目的を持ったビジョンを構築し、組織や社会に向けてメッセージを展開していきましょう。
【配色の考え方】
配色とは、複数の色を効果的に組み合わせ表現したいイメージを表すことを意味します。複数の色が相乗効果によって「美しさ」や「心地よさ」を作り出して調和を生み出していきます。この配色に悩むデザイナーは多くいますが、配色の調和の基本としては「同一色による調和」「類似色による調和」「補色による対比の調和」を軸にまず考えていくと進めやすいのではないでしょうか。
【同一色による調和】
同一色による調和「同一調和」とは文字の通り同じ色相、一色による配色となります。一色の濃淡の配色で表現にまとまりを出せますが、平坦な印象となってしまう面もあります。
【類似色による調和】
色相環で考えた時に隣り合う近似色2色による配色を「類似調和」とし統一感を感じさせるイメージとなります。
【補色による対比の調和】
色相環で180度の関係の向かい合う補色2色の配色を「対比調和」と言いコントラストが強く主張が感じられるイメージとなります。
以上はロゴデザインを2色で考えた場合の基本的な配色の考え方ですが、3色以上での表現やグラデーションを使ったロゴなど、様々な表し方が検討できます。ブランドや組織のアイデンティティを配色で実現させていくのはとても重要な過程です。
【カラーイメージと色彩心理】
「暖色と寒色」 「明色と暗色」 「清色と濁色」という分け方が心理的な色の整理の仕方となります。
カラーから読み取れる心理的印象をまとめると左のような図となります。また、色合いの違いと心理的な性質を整理すると下図のように表されます。
「暖色⇔寒色」が「活動性」、「明色⇔暗色」が「潜在性」、「清色⇔濁色」が「評価性」と深く関わっています。
「活動性」とは「動的⇔静的」「派手⇔地味」という印象に相関性が強い性質で、「潜在性」は「重い⇔軽い」「かたい⇔柔らかい」に、「評価性」は「好き⇔嫌い」「美しい⇔きたない」という印象と結び付く傾向があります
3.DICカラーガイド色見本帳で使用するブランドカラーを選定
DICカラーガイドは、グラフィックデザインはもとより自動車やファッション、建築などあらゆるジャンルでお使いいただいてます。色は人の感覚と強く連動していますが、人によって「赤」と言われても「青みがかった赤」や「黄みがかった赤」など連想する色は千差万別です。
カラーチップを用いることで共通の認識で色のコミュニケーションを取ることができるので、VIのカラーイメージ作成の際に、DICカラーガイドは数多くの企業やデザイナーのお役に立っています。
ロゴやブランドの色指定やガイドラインに、このDICカラーガイドでの色指定と、4色印刷の場合のCMYKでの色指定、白黒印刷の場合のグレースケールの色指定、ディスプレイ表示などデジタル表現の際のRGBの色指定などは最低限必要になってくるでしょう。
【これから求められる配色の考え方:カラーユニバーサルデザイン】
カラーユニバーサルデザインと言う言葉を耳にする機会が増えてきました。色の見え方には個人差があり、一部の色の組み合わせが区別することが難しく、不便さを感じるケースがあります。多くの人が等しく情報の認識を可能とする配色を用いたデザインが社会的に必要とされています。
公共性の高い表示や安全性に関わる表示である路線案内図、または災害時の気象情報をはじめ、見分けやすい配色やデザイン上の改善が「カラーユニバーサルデザイン」によって見直されています。
DICグループは東京大学 伊藤啓准教授の監修のもと、一般社団法人日本塗料工業会、石川県工業試験場、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構らと共に2007年より制作委員会を設け、印刷や塗装、画面表示の分野を横断した協力体制を築きカラーユニバーサルデザインの考えに基づき
「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット」の研究・開発・普及活動に取り組んでいます。
4.色の選定を専門家にお任せすることも
今やデジタル上で専門的な知識を必要とせず色彩の表現や配色が可能となっています。しかし、VI開発においては印刷された紙の色、ファッションやプロダクト、建築物など様々な「素材と色の関係性」を配慮しながら、あらゆる人への視覚的な効果を考えていくことが必要です。
配色の世界は奥が深く、体系的な知識や調査が必要になってくる場面もあるでしょう。DICでは様々な分野の調査対象に対して、目的に合わせた切り口で分析が可能なイメージ調査手法「DCAM(ディーカム:DIC Color Application Method)」を独自に開発。
ブランディングやものづくりなどの現場における、市場動向やターゲットの嗜好性把握、競合との差別化、製品企画、プロダクトや建築・空間などのカラーデザイン、R&D・研究開発などのエビデンスとしてご活用いただけます。
色を選ぶには組織や企業のブランドの持つビジョン、イメージを明確にして選定していくプロセスが重要となります。VIを決定する際のロゴデザインや色選びで迷うことがあれば、色の体系的な知識を強みに持つDICカラーデザインまでお気軽にお問い合わせください。
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【入門】カラーイメージ
色を見ると人はイメージを抱きます。そのイメージが製品戦略の成否を左右することも少なくありません。どのように視座を高めて活用ノウハウを蓄積し、最適化することが肝心なのか。多角的な視点を学ぶカラーイメージ入門です。