Top Creator’s Interview

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【Top Creator’s Interview Vol.3】

「Experience and Collaborate with Chinese design 」
瞿铮 Jack Qu
(英国 China Design Centre 創設者兼CEO)

Interview Information

場   所オンラインインタビュー
対 談 者瞿铮氏 Jack Qu/China Design Centre 創設者兼CEO
周昕(大前絵理)/DICカラーデザイン株式会社
アジアカラートレンドブック』編集長

中国デザインを世界に伝える

China Design Centre設立 2014.05.01

China Design Centre設立 2014.05.01

China Design Centre設立 2014.05.01

2014年5月にロンドンのビルディングセンターでのChina Design Centreオープニングセレモニー。英国文化協会、英国デザイン協会、英国貿易投資総省 (UKTI)、V&A博物館、アーツ・アンド・クラフツ協会、英国建築センター、皇室建築士協会、英国100% design、百貨店Harrodsや各大学関係者など、300人を超えるデザイン関係者が参加。

周昕(以下、周): 改めて、China Design Centre(以下、CDC)を設立したきっかけを聞かせてください。

Jack Qu(以下、Jack): 中国文化に根ざした最新の中国デザインを世界に伝えることです。ロンドンには、すでに日本(Japan House)や韓国のデザインセンターがあって、中国を伝える窓口も必要だと考えました。当時西洋では、中国のことを安い「メイドインチャイナ」製品か、博物館の古代コレクションとしか認識がありませんでした。コロナ禍の影響もあって、いまは、インターネットプラットフォームでの活動が中心になっています。

2018年CCTV-4国際チャンネルにゲストとして登場

2018年CCTV-4国際チャンネルにゲストとして登場

周: 中国のメディアでも報道され、反響が大きかったようですね。

Jack: そうですね。新聞やテレビで沢山報道され、注目を集めました。

2019 ロンドンギャラリー「中国現代クラフト展」

2019 ロンドンギャラリー「中国現代クラフト展」

2018 英国Royal College of Art ガラス陶芸学科卒業展示

2018 英国Royal College of Art ガラス陶芸学科卒業展示

周: CDCは2014年に創設以来、50を超えるイベントを開催されたそうですね。「西洋に中国のデザイン文化を伝える」、反響はいかがでしたか?私も仕事柄、グローバルデザイントレンドの定点観測を行っていますが、ちょうど2014年頃から、世界で「チャイナデザイン」が注目され始めました。CDCの活動も寄与しているでしょうね。

Jack: イギリスでの展示も数多く行いましたが、イタリアのデザイン雑誌や、Wallpaperなどにも中国デザイナーの情報を提供しました。まさに情報プラットフォームとしての役割を果たしています。

周: CDCのHPで紹介されているほとんどの中国デザイナーは、西洋のデザイン教育を受け、中国の伝統要素を解釈した作品を作られていますね。ユニークで、完成度もとても高い作品ばかりです。

Jack: そうですね、中国文化を体現している作品を中心に紹介しています。多くのデザイナーはイギリスで勉強し、卒業展示で注目された方です。ファッション、ジュエリー、家具など、優秀なデザインが増え、国際的に受賞する中国デザイナーも次々と現れ、個性的な中国デザインの存在感が高まっています。MAD Architects(馬岩松)、柳亦春、DONG Gong董功、Neri&Hu如恩などの建築家も世界で高く評価されています。

周: 中国では最近「国風」「国潮」トレンドが流行し、故宮博物館プロデュースの化粧品や、伝統装飾要素を用いた化粧品ブランドが人気を博しました。このブームの先掛けとして、ファッションやインテリアにおける中国スタイルが先行していたように感じます。

Jack: クリエイションは自らの原動力から発されるべきで、商業に追随するものではありません。今の流行を見ると、伝統文化に根ざした良いデザインもありますが、マーケティング的視点でトレンドをアイコン化したものも多いと感じます。3年経っても残るデザインは、本当の良いモノです。そういう意味ではヨーロッパのデザインは、人為的な創作や宣伝が少なく、自然の流れの中で、ゆっくり時代の文脈の中で更新していく。中国では、人為的な都市や街を作ってしまうので、コピーしたような個性のない空間が沢山できてしまう。要素化された浅はかなものは、残りません。

周: これからの中国デザインはどのように進化していくと思いますか?

Jack: 自然に進化していくと思います。中国には多くの地域と民族があり、今後、デザインの豊かな地域性が現れ、「中国」という概念は徐々に薄れていくでしょう。多様で中庸的、西洋でも東洋でもない、情感や文化的に中庸な中国デザインが現れると思います。

周: 様式もそうですが、ディテールの追求も一層重要になってくると感じます。

Jack: そうですね、中国の多くの空間には要素が多すぎます。人より物のほうが多く、新しくて、直線が多くて、空間を埋め尽くすデザインは、どこも同じように見えます。人工的な鳥かごのようです。私は、中国の空間に「自然療法」が必要と提案しています。写真を撮る時の空の背景と同じですね。

2018パリM&O「文心創物―中国現代工芸展」

2018パリM&O「文心創物―中国現代工芸展」

2018年イタリア「Lucca国際紙ビエンナーレ」中国パピリオン

2018年イタリア「Lucca国際紙ビエンナーレ」中国パピリオン

2016中国の書道家王冬齢によるライブパフォーマンス(大英博物館/V&A博物館)

2016中国の書道家王冬齢によるライブパフォーマンス(大英博物館/V&A博物館)

周: 私が日本で体感している伝統保護は、建築、庭園、生け花、料理、着物、工芸など様々な文化人や職人、芸術家が「ライフスタイル文化圏」でつながっています。近年では、工業製品や世界的アーティストとのコラボも注目されています。その根源となる中国文化も、これから新たなDNAを創り出すと思います。

Jack: 日本は、伝統に基づいて、現代人の生活に合わせて常に進化しているように感じます。中国では、伝統空間に現代人を連れ戻そうとしている傾向があります。現代人の生活習慣を変えてまで伝統を守るのではなく、進化していくべきです。

周: 英国学者との共著『Contemporary Chinese Furniture Design』は、現代インテリア史における記念すべき一冊だと思います。反響はいかがでしょうか?

Jack: デザイン史で定評のあるFiell夫妻との共著では、中国伝統家具のルーツ、デザイン要素の進化について解釈しました。なかなか読み応えのある本です。中国語版も9月に出版される予定です。

英国作家Fiell夫妻との共著『Contemporary Chinese Furniture Design』

英国作家Fiell夫妻との共著『Contemporary Chinese Furniture Design』

古民家のリノベーション

ロンドンの古民家

ロンドンの古民家

Flea Market

Flea Market

周: 建築家としてロンドンを中心に古民家のリノベーションをされていますね。

Jack: 私は建築家として古民家に興味を持っています。時とともに「成長」していく家には特別な味わいがあって、それがリノベーションの際のインスピレーションになります。私はインダストリアルなスタイルがあまり好きではありません。ロンドンのアンティークマーケットが充実していて、様々な時代のものがあるので、そこに使う家具も、アンティークショップで見つけてきて、家具に込められた魂と対話しながら、その美を引き出していきます。

中国の書家陳江旭氏の作品を造作

中国の書家陳江旭氏の作品を造作

周: リノベーションは、東洋と西洋のミックススタイルを意識されていますか?

Jack: 特にミックスを意識しているわけではありません。理性的に考えますが、感性的に選びます。形、ディテール、素材、色など、合理的で個性的なものを作りたいです。例えば、中国の書道家の作品は、もともとはきちんと文字が書かれたものです。形が強いので、文字を裁断して、コラージュし、キャンパスに貼り付けました。もとの要素と質感を残しながら、新しい構図を作りました。

周: 欧州でもインテリア家具のトレンドが定期的に発信されています。アールデコ、バウハウス100周年など、そういったトレンドはどのぐらい市場に影響を与えていますか?

Jack: こうしたトレンドは、消費を促すためのマーケティングや広告の一環だと思います。新商品を創作するブランドがありますが、これはトレンドとは関係ないと思います。中国では今グラフィティアート、キャラクター家具などネットインフルエンサー的なものが流行っていますが、服の流行と同じ、二三年も経つと古く感じるでしょう。流行を追いかけて買ったとしても、自分に合っているとは限りませんので。

周: コロナ禍で心境の変化がありましたか?多くのクリエイターを取材しましたが、皆さん立ち止まって自分の中で考えることが増えたそうです。今までは新しいアイデアやパフォーマンスで世を驚かそうとしていたのが、本来のものの良さや人の生活を支える機能、人を癒す効果など、デザインやアートは見せることより、人を喜ばせて元気にするという原点に戻っていると感じます。

Jack: 以前はとても忙しかったので、思いついたらすぐに行動していましたが、体の自由がなくなって、考える時間が増えました。「万物心から生ずる」。今は自宅の庭でスタジオを作っています。とても楽しいです。今度はスタジオからインタビューに応じられますよ。

周: スタジオ完成後のインタビューを楽しみにしています!

Jackロンドンの家

Jackロンドンの家

Profile

瞿铮 Jack Qu
英国 China Design Centre 創設者兼CEO

イギリスロンドンにあるChina Design Centreの創設者Jack Quは、中国と英国で景観建築を学んだ後、2003年から10年間著名な建築BDPに勤めた。BDP上海事務所を設立した際、多くの優れた中国オリジナルデザインが出現したにもかかわらず、欧米ではまだ「中国製」は低品質の代名詞と捉えていることに気づく。Jackは1年かけてColin Tweedyの支援を受けて、2014年5月にロンドンのビルディングセンターにチャイナデザインセンターを設立。以来、ニューヨークデザインウィークの中国デザイン展、V&Aミュージアムや大英博物館での中国アート展、ロンドンデザインウィーク、ロンドンクラフトウィーク、イタリアLuccaクラフト展、パリMaison&Objetでの現代中国工芸展、Art Fair Leipzig 2019、杭州のチャイナクラフトウィーク(2017/2018)など50を超えるイベントをキュレーション、運営し、メディアへの情報提供、本の出版など、西洋に新しい中国デザインの革新性とユニークさを伝えている。一方、建築家としてロンドンの古民家改造や家具のリノベーションを手がけ、西洋と東洋のミックススタイルを模索している。趣味は旅行、登山、撮影、夢はイギリスで中国スタイルの民宿を営むこと。

China Design Centre

www.chinadesigncentre.com
アジアカラートレンドブック

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斬新なアジアの感性、消費者マインド、アート、伝統工芸と哲学、CMFトレンドを発信するクリエイティブ・インスピレーションブックを2008年より発行しています。
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