マンセル表色系とは

◆「マンセル表色系」は世界で最も普及している表色系

表色系とは「色の表わし方」のことで、これを使うと「記号」や「数字」で色を表すことができ、言語の壁を超えたコミュニケーションツールとなります。世界的なレベルで最も普及している表色系は、「マンセル表色系」といえるでしょう。マンセル表色系は、アメリカの美術教育者で画家でもあったアルバート・マンセルによって考案されたカラーオーダーシステム/color order systemで、色の三属性によって物体色を表示する典型的な表色体系です。
カラーオーダーシステムは別名「顕色系/color appearance system」ともいい、系統的に色を配列した標準となる色見本(色票集)がある表色系のことをいいます。それと異なる表色系が「混色系/color mixing system」という表色系です。混色系は混色の原理によって色を規定している表色系で、XYZ表色系が代表的です。

◆「マンセル表色系」の系譜

オリジナルといえるマンセル表色系は1905年に自著『A Color Notation(色彩表記法)』に著されました(日本では2009年8月に日髙杏子先生によって『色彩の表記』として翻訳されて、みすず書房から発行されています)。
その後、1915年に『Atlas of the Munsell Color System』、マンセル没後の1929年に『Munsell Book of Color(マンセルブック)』が発行されました。没後にマンセルブックが生まれたこととなりますが、これは科学者の子息アレクサンダーの尽力ということです。今日のマンセル表色系は、1943年にOSA(アメリカ光学会/Optical Society of America)が、視覚的均等性の視点から色に修正を加えて発表した「修正マンセル表色系/Munsell renotation system」というものとなります。一般にマンセル表色系という場合、この修正マンセル表色系を指し示します。

アルバート・マンセル

アルバート・マンセル

マンセル表色系は、JIS(日本産業規格/Japanese Industrial Standards)の『色の表示方法-三属性による表示/JIS Z 8721』にも採用されており、「JIS標準色票」もマンセル表色系の色票集といえます(JISは法改正により、2019年7月より、「日本工業規格」から「日本産業規格」に改められました)。

  • 旧パッケージのマンセルブック
    The Munsell Book of Color and name are used with the permission of Munsell Color, Division of GretagMacbeth

  • 新パッケージのマンセルブック
    ※写真提供:エックスライト社

  • JIS標準色票 光沢版(第9版)
    ※写真提供:(一財)日本色彩研究所

◆「マンセル表色系」の三属性

マンセルの色相は「Hue(ヒュー)」といい「R(赤)・Y(黄)・G(緑)・B(青)・P(紫)」を基本5色相として時計回りに視覚的均等性をもって配置されています。その間に「YR(黄赤)・GY(黄緑)・BG(青緑)・PB(青紫)・RP(赤紫)」を挿入し、合計10色の主要色相で色相環が作られています。

マンセル色相環(20色相:主要10色相を2分割した場合)

マンセル色相環(20色相:主要10色相を2分割した場合)

主要10色相は、1~10で、次の色相記号に移り変わりますが、「0」表示はありません。例えば、R色相からYR色相に変わる際は「10R=0YR」の意味になり、表記は10Rとなります。10を超えると「0.1YR」といった色相記号表記になります。
また、マンセル色相記号では5がその色相の中心の色ですが、一般的に5の色が最もその色相らしい色とは限りません。例えば5Bはマンセル色相では中心の青となりますが、PCCSでは「緑みの青」に位置する色となります。色相環を構成する色は、表色系の設計の違いによって異なります。
なお、マンセル表色系の色を色票で確認できる『The Munsell Book of Color』や『JIS標準色票』は、主要10色相がそれぞれ4分割されて「2.5R、5R、7.5R、10R」などのように2.5の色相違いで色票が収録されています。

マンセルの明度は「Value(バリュー)」といい、明度10の理想的な白と、明度0の理想的な黒の間を均等に合計11段階に分けられています。
実際に色票化されているのは最高明度「9.5」、最低明度「1.0」ですが、0.5ステップをとるなど、さらに細かい表記も可能です。

マンセルの彩度は「Chroma(クロマ)」といい、彩度0(ゼロ)の無彩色からどれだけ離れるかによって彩度が高い方へ1、2、3・・・と数値が上がって行きます。ただし、最高彩度の位置は色相ごとに異なります。これは安定して色再現できる範囲だけが色票化されているためであり、今後、色票の色再現域が広がってくればマンセル表色系の最高彩度は伸びる可能性を秘めています。

マンセル色立体
※写真提供:日本色研事業(株)

マンセルの色相、明度、彩度を三次元空間にまとめたマンセル色立体は、左の写真のようにでこぼことした形をしています。
これは、色相ごとに最高彩度やその明度の位置が異なるためです。いびつな形が自然界に生える木のようであり、今後も成長していく可能性を秘めているという例えから、マンセルの色立体は別名「カラー・ツリー(色の樹)」ともいわれています。

下図のように、表色系の同一色相の色を明度段階と彩度段階を規則的に変化させて配置した図を「等色相面」といいます。この図を見ると、5R色相の最高彩度の色の明度が最も高いことや、色相によって最高彩度の位置が異なることがよく分かります。

マンセルブック基本10色相の等色相面
※出典:Munsell Book of Color(旧パッケージ)

◆「マンセル表色系」の表記方法

5Rの等色相面
※出典:マンセルブック(旧パッケージ)

マンセル表色系では、有彩色の場合は「Hue(色相)」「Value(明度)」「Chroma(彩度)」の順で、明度と彩度の間にスラッシュを入れて「HV/C」と表記します。スラッシュは「の」と読み、左図の「5R4/14」の場合は「ごあーる、よんの、じゅうよん」と読みます。こうした表記方法を「マンセル値」と呼びます。また、図では色相、明度、彩度の数値を整数で表記していますが、十分の1、百分の1の小数表記として、細分化することもできます。
また無彩色の場合は色相と彩度を持たないため明度のみを表記し、明度数値のあたまに「Neutral」の頭文字の「N」をつけて表記します(JIS Z 8721ではNを斜体で記載することになっています)。中程度の明るさのグレーであれば、例えば、「N5.5」と表記し、「えぬ、ごてんご」と読みます。このような方法で、さまざまな色を表記することが可能となっています。

ライト色立体 マンセル