オストワルト表色系とは

◆オストワルト表色系

  • オストワルト表色系は、1923年ドイツのノーベル賞化学者オストワルトによって考案された「混色系」の表色系です。混色系とは何らかの原色を決めてこれらの「混色量」で色を表示する表色系で、カラーオーダーシステム(別名「顕色系」)とは違って色票を持たないのが特徴です。

    しかしオストワルト表色系は、かつてアメリカのコンテナー・コーポレーション・オブ・アメリカ(CCA)より発行された「カラーハーモニーマニュアル(CHM)」という色票を伴った例外的な混色系の表色系でした。

    しかしそれも現在では発行されておらず絶版となっています。

  • ウィルヘルム・オストワルト

    ウィルヘルム・オストワルト

    ラーハーモニーマニュアル(CHM)

    カラーハーモニーマニュアル(CHM)

  • オストワルトは、あらゆる色は「理想的な白(W)」「理想的な黒(B)※」「理想的な純色(F)」を適当な面積比で回転混色すると作ることが出来るとしました。(下図参照) (※:BはSと表記されることもあります。ドイツ語の黒 Schwarz)

  • 回転混色

    W (理想的な白)+B (理想的な黒)+F (理想的な純色)=100

  • オストワルト表色系は、色表示よりも「混色量の共通性」という考え方にもとづいた「色彩調和」を目的としていますが、この考え方は日本で作られた表色系である「PCCS(日本色研配色体系)」のトーンによる調和の考え方や、ドイツの標準色票である「DIN表色系」にも多大な影響を及ぼしています。

  • オストワルト表色系の色相は、ヘリングの反対色説の原色である「赤(Red)⇔緑(Sea Green)」「黄(Yellow)⇔青(Ultramarine Blue)」の2対の反対色を円周上に直行するように配置し、その4色の間に「橙(Orange)・紫(Purple)・青緑(Turquoise)・黄緑(Leaf Green)」の4色を配置し8色相となっています。

    またその8色相をそれぞれ3分割にし、最終的に合計24色相となっています。

  • オストワルト色相環

    オストワルト色相環

  • オストワルト表色系には明度や彩度という概念はなく、明度に相当するものを「白色量」、彩度に相当するものを「純色量」で表します。すなわちすべての明るさや鮮やかさは「白色量」と「黒色量」と「純色量」の割合(混合比)で決まります。

    無彩色は下記の8種類の記号(アルファベット)1文字で表記し、その1文字で「白色量」と「黒色量」が以下のように決まります。aに近づくほど白色量が増えるために明るくなり、pに近づくほど黒色量が増えるために暗くなります。

    なお、理想的な白(W)・黒(B)・純色(C)のような色は実際には存在しないため、実用上は最も明るい白はa(白色量:89、黒色量11)、最も暗い黒はp(白色量:3.5、黒色量:96.5)とされています。

  • 高明度 ← ← 中明度 → → 低明度
    記号 a c e g i l n p
    白色量
    ()
    89 56 35 22 14 8.9 5.6 3.5
    黒色量
    ()
    11 44 65 78 86 91.1 94.4 96.5
    a~p(無彩色)
    の場合
    WB=100%
    100 100 100 100 100 100 100 100

    ※単位は%:パーセント。有彩色の場合は純色量も加わって合計100%:W+B+F=100(%)

  • 有彩色は、オストワルトの色相を表す1~24の「色相番号」に「白色量を表す無彩色の記号一文字」「黒色量を表す無彩色の記号一文字」を2つ組み合わせて明るさや鮮やかさを表します。必ず前の記号が「白色量」、後ろの記号が「黒色量」を示し、またその組み合わせは8つのアルファベットの並び順の逆になり、必ず後ろから前へとかかります。

  • オストワルト等色相面

    オストワルト等色相面

  • 8つのアルファベットの組み合わせは合計で28パターンになりますが、ということはオストワルトの等色相面における有彩色は28色ということになります。

    無彩色の8色も合わせると1辺が8色ずつの綺麗な正三角形になることから、オストワルトの等色相面は別名「等色相三角形」とも呼ばれています。

  • オストワルトの等色相面には以下のような共通性を持った系列が並んでおり、オストワルトは「白色量」や「黒色量」、「白色量における純色量の割合(オストワルト純度)」などに共通性がある色はそれぞれ調和するとしました。

  • 1 等白系列 (isotints) 「白色量」が等しい色のグループ。
    「純色と黒」を結んで「白」に向かって平行に並ぶ
    直線上の色の列
    前につく記号が全て同じ  (例)

    la → lc → le → lg→ li

    2 等黒系列 (isotones) 「黒色」が等しい色のグループ。
    「純色と白」を結んで「黒」に向かって並ぶ平行に並ぶ
    直線上の色の列
    後ろにつく記号が全て同じ  (例)

    ge→ ie → le → ne→ pe

    3 等純系列(isochromes)
    ※別名:
    シャドウシリーズ
    「オストワルト純度」=「F/W」=「純色量/白色呈」 が等しい色のグループ。
    無彩色軸に平行な色の列
    前後の記号はバラバラ  (例)

    ga→ ic → le → ng → pi

    4 等価値色系列(isovalents) 「白色量、黒色量、純色量」共に等しく、色相だけが違う色の グループ。無彩色軸から等しい距離で色立体上でも同じ高さ。
    無彩色軸を中心にした同一の円周上に位置する。
    等価値色系列上に並ぶ色はオストワルト色相環と同じ色相の24色。
    前後の記号は全て同じ。色相番号のみが異なる  (例)

    5le → 11le → 17le → 23le

  • オストワルトの色立体は、下の写真のようにきれいな二十円錐形のそろばん型をしています。これは、等色相三角形が24色分集まったと考えると分かり易いでしょう。「調和は秩序に等しい」という有名な言葉を残した化学者らしいオストワルトの一面をのぞくことができます。

  • オストワルト色立体構造図

    オストワルト色立体構造図