XYZ表色系とは

◆XYZ表色系

「XYZ表色系(Yxy表色系)」は、1931年に国際照明委員会(CIE)で標準表色系として承認された色の表わし方です。マンセル表色系やNCSといった顕色系の色体系と異なり、混色系の色体系です。混色系とは、原色を設定してその混色量で色を表示する体系のことで、色の定量的表示に適しています。「XYZ表色系」は、[R][G][B](Red/Green/Blue)という「色光の三原色」の混色量を原理にしています。この原理は、人間はRGBの3種類の受容器によって色を知覚しているという「ヤング-ヘルムホルツの三原色説」の上に成り立っています。
CIEは、色の表示を標準化するために[R][G][B]という原色を、赤原色[R]=700nm(nm=ナノメートル)、緑原色[G]=546.1nm、青原色[B]=435.8nmの単波長光と定め、これらの原色を用いた「等色実験」(三原色を調整しながら混色し、等色した=等しい色に見えた、その瞬間の三原色の各混色量を測る)を重ね、「等色関数」(人間の標準的な色覚を数値化した関数)を定義しました。

  • 太陽光のスペクトル

  • 等色実験

しかし、このRGB系の等色関数では、440nm~545nm(青紫~黄緑系)の色において、負の値が生じることが問題となりました。つまり[R][G][B]の混色量では、この色域の単色光を正確に再現できないということです。こうした不都合を数学的に回避するために考えられた表色系が「XYZ表色系」です。実在する色光[R][G][B]という原色の混色で再現できない色までも表現を可能にした実在しない原色(虚色)を[X][Y][Z]としたと解釈できます。[X]、[Y]、[Z]は、おおむね[R]、[G]、[B]に対応した色と考えられますが、これらを原刺激と呼び、三原刺激[X][Y][Z]の混色量であるXYZで示される数値を「三刺激値」といいます。また、Yは緑成分とともに原刺激の中で唯一明るさ(視感反射率、視感透過率)を表す刺激値となります。

XYZ表色系は、知覚色の体系化を主たる目的とした顕色系と異なり、色の定量的表示を目的とした混色系であるため、光源次第で値が異なったり、人(眼)によって値が違うといったことでは目的を果たせません。三刺激値は計算によって求められますが、それに必要な条件は下記の3つです。

  • 【1】と【3】を一定にしたときに、【2】試料色の分光反射率からそれと同じ色になる原刺激の「混色量」で色を表示します。 XYZ表色系のように色を数値化したことで色は科学として大いに発展しましたが、三刺激値は虚色の混色量なのでXYZの値を見てもすぐにどのような色かを判断することは困難です。
    そのため、実際には三刺激値(三原刺激の混色量)の比率(三原刺激の混色比)を用いた色度図で表現されることが一般的です。X、Y、Zの混色比、x、y、zは下記のような計算式で表せます。

色は混色比で表されるので、x+y+z=1(100%)となります。xとyが分かればzの値も分かるので、あえてzの表示を行うことはせず、色度座標(色度図)上ではxとy だけを用いて表示し、「xy色度図」と呼びます。xy色度図はxを横軸に、yを縦軸にした釣鐘状(もしくは馬蹄形)の形をしており、「主波長(色相に相当)」と「刺激純度(彩度に相当)」のみを表し、明るさに相当するものは表していません。色度座標は混色比のため人間が直接見る色を表現するものではありませんが、混色の比率からどのような色かをイメージしやすくなるという利点があります。また「xy色度図」を用いて色を表す場合、原刺激の混色量Yを組み合わせたYxyの三要素で表されます。xyで色相・彩度の情報、Yが明度情報という概念に対応しています。

  • xy色度図(色の二次元座標上での記述)

  • xy色度図の構造図

x軸は数値が大きくなるほど「赤み」の比率が増し、数値が小さくなるほど「青み」の比率が増します。色度座標のy軸は数値が大きくなるほど「緑み」の比率が増し、数値が小さくなるほど「青み」の比率が増します。

「x=0.33」のところは赤みの混色量が33%であることを示し、「y=0.33」のところは緑みの混色量が33%であることを示します。この位置の近くは、残りのzも約0.33(33%)になり、[R][G][B]の混色の結果は白色となりますが、ここは「白色点(はくしょくてん)」と呼び、最も低彩度(無彩色)となる部分です。
釣鐘状に湾曲している部分は「スペクトル軌跡」と呼び、「赤・橙・黄・緑・青・藍・青紫」といった色相の違いを表しています。直線上の部分は「純紫軌跡(じゅんむらさききせき)」と呼び、スペクトルに含まれない紫と赤紫、またその混色の部分を表しています。中心の白色点から周辺のスペクトル軌跡、または純紫軌跡の方向に向かうにしたがって低彩度から高彩度へと移行し、彩度の違いを表しています。 三刺激値を混色した結果にできる色は、すべてスペクトル軌跡と純紫軌跡で囲まれた領域の内部に位置することになります。

三刺激値(混色量)や色度座標(混色比)といった測色値によって色を表示するこのXYZ表色系のシステムは、色票集のようなビジュアライズされた資料がなく、また数学的な計算によって定義されていることもあり、難解な表色系の代表格です。しかし、制定後70年以上経過した現在でも色の国際標準となっており、世界中の色彩に関わる産業で広く用いられています。

PCCS 基本掛図